【1】(9)PTC(Positive Temperature
Coefficient)素子の導電機構および限流後の耐電圧特性に関する研究 |
研究内容 
近年,電力系統において,負荷やネットワークの接続点の増大のため,低・中電圧回路網に対して,短絡時の電流の大きさが増加を続けている。そのため短絡電流が機器やシステムの破壊を引き起こし,産業に大きな影響を及ぼす恐れがある。そこで,短絡電流を限流する技術は,機器やシステムの設計や保守に極めて重要になる。 これまでの限流器は,低電流定格・低制限電圧および,ヒューズなどのように1度しか使用できない,コストが高い,サイズが大きいなど,問題となっている。そこで現在,高い電流定格・制限電圧を持ち,繰り返し使用可能,コンパクトで経済的な限流素子に対して産業の大きなニーズがある。 PTC(Positive
temperature coefficient )
素子は電気抵抗率の正温度特性を持った複合材料であり,限流デバイスとして関心が高まっている。しかし,PTC素子は限流後の過電圧に対しての耐電圧向上,材料の最適組成条件,電極材料や形状の選定など,実用に供する以前に多くの検討課題がある。すなわち,PTC素子には抵抗ジャンプ後の耐電圧向上,放電の発生,抵抗復帰性の悪化などの多くの検討課題がある。部分放電による長期劣化現象の解明および発生の防止は,PTC限流素子の信頼性を高める上で重要な課題の一つとなっている。また,PTC素子の限流の原理,特に,その電導機構を解明・理解することは,上記の検討課題を解決するために有効であり,さらに,新たなPTC限流デバイスの開発にとって重要である。特に,セラミックスを母材として導電粒子を含有するセラミックPTC素子は,高分子PTCに比較して高い融点を持つため,高電流定格・高制限電圧の限流デバイスとして期待できる。 以上の観点より,本研究では,セラミックスを母材として導電粒子を含有するPTC素子に対して,電導機構の解明および限流後の耐電圧向上を行うことを目的とする。以上の検討を通して,高電流定格・高制限電圧の限流デバイスとしてのセラミックPTC素子の開発を目指す。
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