研究テーマ |
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【1】(12)宇宙環境を想定した真空中の帯電・放電現象に関する研究 |
研究内容 
将来,低地球軌道(高度 :
200km-1000km)で建設が予定されている国際宇宙ステーションや宇宙太陽発電衛星(SPS : Solar Power
Satellite)のような大電力(>100kW)を必要とする大型宇宙飛翔体は,100Vを越す高電圧で運用する必要がある。しかし,高電圧太陽電池が宇宙空間で高電圧をもつと,宇宙プラズマとの相互作用により高電圧の大部分が周辺プラズマに対して負になる。そのため,周辺電離層からイオンが太陽電池のカバーガラス表面に衝突して,カバーガラス表面が正に帯電し,トリプルジャンクション(Fig.1に示すインタコネクタと接着剤と真空の三つが重なる箇所)近傍の電界が強められ,放電に至る。放電が度重なって起こると,放電発生箇所の劣化による太陽電池の効率の低下や故障にもつながる。また,放電電流やそれに付随した電磁波が機器の誤動作や故障の原因にもなる。 このような背景のもと,現在,我々は1kVを越えた電圧でも運用可能な太陽電池の開発を目指して,基礎研究を行っている。その中で,放電抑制のために,カバーガラスの帯電を防いでトリプルジャンクションの電界集中を抑えることを考えた。そのため,PETフィルムをカバーガラス前面にバリヤーとして取り付け,イオンを物理的に阻止することを試みた。PETフィルムを付けた効果について放電の頻度と規模の抑制という観点から検討している。 研究の最終的目標は,太陽電池表面での放電発生頻度の予測モデルを作り,その予測モデルに従って太陽電池の劣化とEMI(電磁干渉)が及ぼす影響等を予測することで宇宙機設計に有効なツールを作ることにある。 太陽電池の放電頻度はインタコネクタ周辺のトリプルジャンクションにおいて放電に至る電界を形成するのにかかる時間で決まる。もし一つ一つのインタコネクタが独立していて,帯電・放電を繰り返すなら個々の発生箇所の帯電時間と放電頻度は計算可能である。しかし,多数のインタコネクタがある太陽電池アレイでは,ある箇所で放電が起きたときに発生箇所付近に高密度のプラズマが発生し,他の箇所の帯電状況に大きな影響を与える。また,放電電流が流れ込むことでアレイ自体の電位が上下するので,それによって帯電状態も変化する。このようにある箇所の放電が他の箇所に及ぼす影響が不明であり,大面積を持った太陽電池アレイでの放電頻度を予測するために解明すべき課題である。
Fig.1
Typical structure of solar
array.
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研究業績リスト
| <国際会議>
(1) |
Ko Shiraishi, Mengu Cho, Masayuki
Hikita : "Optical Measurement of Charging and Discharging Processes
on Insulator Surface in Simulated Low Earth Orbit Plasma
Environment", 26th International Electric Propulsion, October 17-21,
1999, Kitakyushu, Japan (Poster
Session) | <口頭発表>
(1) |
白石 康,趙 孟佑,匹田 政幸:「低地球軌道プラズマ環境における太陽電池の放電抑制に関する予備実験」,平成11年度電気関係学会九州支部連合大会,pp.54,October
3,北九州(1999) |
(2) |
白石 康,出口 寛,趙 孟佑,匹田 政幸:「低地球軌道プラズマ環境における太陽電池の放電抑制手段の検討」,第19回宇宙エネルギーシンポジウム(平成11年度),pp.104-107,February
18,相模原(2000) |
(3) |
白石 康,趙 孟佑,匹田 政幸:「低地球軌道プラズマ環境における高電圧太陽電池の繰り返し放電による性能劣化」,平成12年度電気関係学会九州支部連合大会,No.767,October
3,福岡(2000) |
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