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(5)高電圧機器の絶縁設計システムの開発 |
研究内容 
電気エネルギーは,社会生活から産業界まで支える最も重要なエネルギーの一形態であり,消費量は年々増加傾向にある。電気エネルギーを発生する発電所は,立地上の制約,環境問題といった面から需要地である大都市から遠く離れた場所に立地されている。このため,発電所から需要地に巨大電力を安定で経済的に且つ効率よく送電するために,電力系統の高電圧化,小型化,信頼の向上が強く要求されている。さらには,環境との調和を図っていくことが今後ともますます重要になってきている。 わが国では,昭和48年以来,500
kVを骨格とする電力系統が構築されてきた。しかし,近年,生活・業務関連を中心に着実な増加が見込まれている電力需要と電源立地の遠隔化に対応するために,新たな電圧階級の導入が必要になってきた。次世代の基幹系統として,1000
kV(UHV)送電の準備が進められており,電力機器はますます高電圧化,大容量化することが予想される。したがって,電力機器の高電圧化,大容量化に対応する電力機器の開発には,高効率,高精度,高信頼性の絶縁設計の開発が要求されている。 絶縁設計の開発の基本である電界解析は,高電圧を用いる電力機器をはじめとして,電界の作用を利用する各種の静電気応用機器においてなくてならない道具になっている。高電圧機器に電界集中部が存在すると,部分放電が発生し,直ちに絶縁破壊に進展するか,または絶縁物を劣化させ,最終的には絶縁破壊を引き起こす可能性がある。従って,高電圧機器の電界緩和を目的とした絶縁設計が必要となる。その一つの方法として,高電圧機器を構成する基本的形状の最大電界の把握が挙げられる。 高電圧機器の最大電界Emaxは,式(1.1)に示すように同一のVとDで定まる平等電界に対して,電界がどのくらい集中しているかの係数fで表される。この係数fを電界不平等係数という。
(1.1) | ただし,Vは印加電圧,Dは電極間の距離である。 設計者が高電圧機器を設計する際,設計通りの形状の電界計算を行い最大電界Emaxを把握するには非常に時間および労力を要する。そこで,設計者は,高電圧機器を構成する基本的形状の電界不平等係数fを用いることにより容易に最大電界Emaxの把握が可能となり,また,高電圧機器の絶縁設計が可能となる。 しかしながら,電界不平等係数fは被覆を考慮しない簡単な曲線でしか表されていないのが現状である。 以上のような背景のもと,本研究では,高電圧機器の一つである油入変圧器を構成する基本的形状の電界分布および最大電界の把握および電界不平等係数の体系化を目的とし,油入変圧器を構成する基本的形状である同軸円筒電極,平行リード電極,平板対リード電極,平板対角電極および平板対被覆板電極に対して数値電界計算を行う。さらに,電界不平等係数を適用することにより,油中における絶縁破壊電圧の推定を行う。 | |