研究テーマ

【1】(3)SF6混合ガスおよび代替ガスの絶縁特性と次世代ガス絶縁変電機器への適用
 研究内容 
高度情報化社会の到来,社会生活の電気依存度の増大などにより,電力機器の高電圧化,大容量化などが進んでいる。一方,立地面積の制限などの理由から,機器の小型化,高密度化,高信頼化などの要請が強くなってきている。このような要求のもと,我々の社会生活に混乱を与えるようなことの無いように安定して大電力を制御する事が重要となってくる。さらに制御機器の小型化の要望を満たすためにガス絶縁機器が開発された。これはガス遮断機(GCB)およびガス絶縁開閉器(GIS)に代表され,日本においてはGISは1969年に初めて導入された。それ以後わが国固有の立地条件への優れた適合性(コンパクト性,耐震・耐塩などの環境性,安全性)から,その適用が急速に拡大し,四半世紀経過した現在,GISは変電所主力開閉機器に成長した。また,ガス絶縁変圧器についても1967年の導入以来,その不燃性による防災設備の合理化や油入変圧器と比較して縮小化が可能であることから地下変電所などにおいても適用が拡大した。このようにSF6ガスは優れたガスであり,今後とも使用され続けると思われる。
一方,SF6ガスは地球環境問題の観点から,塩素基を含まずオゾン層破壊に直接寄与しないが化学的にきわめて安定しており,いったん大気中に排出されると長期残存すると考えられている。このため,地球温暖化への影響度合いを示す指数(Global Warming Potential:GWP)がCO2に比べて大きいとされている。このため,地球温暖化への寄与が心配されることから,気候変動に関する国連枠組条約第2回締約国会議(COP2)においてPFC,HFCなどと共に地球温暖化係数の高いガスとして報告対象ガスに追加された。その後,1997年12月のCOP3(地球温暖化防止京都会議)において規制対象ガスに追加され,排出抑制が求められている。
そこで,SF6ガスの削減が要求されている。SF6ガスの削減方法としては,SF6ガスを全く使用せずにこれに代わる新代替絶縁ガスを用いる方法とSF6ガスにその他のガスを混合した混合ガスを用いる方法の二通りがある。しかしながら,後述するように現在の所,SF6ガスに匹敵する絶縁特性と環境保全性を有するガスは見つかっていない。一方,混合ガスの場合,絶縁耐力が高いガスと低いガスを混ぜても,その絶縁耐力は比例して低下しないというシナジズム効果が現れる事がわかっている。この効果については,大変興味深い結果であり,多くの研究者によって研究が行われているが,不明な点が多く未だに原理は解明されていない。絶縁破壊の先駆現象として部分放電が発生する。この部分放電は一般に絶縁破壊電圧よりも低い電圧で発生するために,電力機器における異常診断においてよく注目される現象である。しかしながら,部分放電から絶縁破壊に至るまでのメカニズムは未だに明確には解明されていない。
以上の背景より,本研究では最終的にSF6ガスに代わる代替ガスを見つけるための指針を示すことを目標とし,その前段階として,混合ガスにおけるシナジズム効果および,部分放電から絶縁破壊に至るまでのメカニズムの解明を目的として研究を行っている。
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 研究業績リスト 
<国際会議>
(1)
S.Ohtsuka, S.Nagara, K.miura, M.Nakamura, M.Hikita:“Effect of Mixture of a Small Amount of CO2 in SF6/N2 Mixed Gas on the Insulation Performance under Nonuniform Fieldモ, IEEE international symposium on electrical insulation , No. 10-3
(2)
S.Ohtsuka,M.Koumura,K.Eguchi,S.Yuasa,S.Okabe and M.Hikita:“PD inception and breakdown voltages characteristics of N2 and CO2 gas mixtures including a PFC gas under nonuniform field”Proceedings of 2000 Korea-Japan Joint Symposium on Electrical Discharge and High Voltage Engineering,pp.806-1 - 806-4 (2000)
(3)
S.Nagasawa,S.Ohtsuka,M.Cho,K.Miura,M.Nakamura and M.Hikita:“Study of Impulse Breakdown Properties of High Temperature SF6 Gas using Laser-Produced Plasma”International Workshop on High Voltage Engineering,Vol.1,pp.123-127(2000)
(4)
M.Koumura, K.Eguchi, S.Ohtsuka, M.Cho, M.Nakamura, M.Hikita,"Time-sequential Characteristics of Partial Discharge in SF6/N2/CO2 Gas Mixture under dc Non-uniform Field", Japan-Korea Joint Symposium on ED and HVE, 337-340, 1-2 Nov., 2001 (Miyazaki)
<口頭発表>
(1)
永良 俊治,大塚 信也,匹田 政幸:「微量CO2混入がSF6/N2混合ガスの絶縁特性に及ぼす影響」,平成11年電気関係学会九州支部連合大会,No. 158,p. 58
(2)
永良 俊治,高村 正樹,大塚 信也,匹田 政幸:「インパルス電圧および発光像による50%SF6/N2/CO2混合ガスの絶縁特性の検討」,平成12年電気学会全国大会,No. 6-226
(3)
高村 正樹,江口 和寿,大塚 信也,橋本 洋助,中村 道昭,匹田 政幸:「電界不平等率を変化させた時のSF6/N2/CO2混合ガスの交流絶縁特性」,平成12年電気関係学会九州支部連合大会,No.752,福岡(2000)
(4)
大塚信也、高村正樹、趙孟佑、三浦浩司、中村道昭、匹田政幸:「平等電界下におけるSF6/N2/CO2混合ガスの絶縁破壊電圧特性」平成12年電気学会基礎・材料・共通部門大会、p.214 (2000)
(5)
大塚信也、高村正樹、江口和寿、湯浅禎之、岡部成光、匹田政幸:「不平等電界下におけるN2/C3F8およびCO2/C3F8混合ガスの絶縁特性」平成12年電気関係学会九州支部連合会大会、p.343 (2000)
(6)
高村 正樹,江口 和寿,大塚 信也,橋本 洋助,中村 道昭,匹田 政幸:「電界不平等率を変化させた時のSF6/N2/CO2混合ガスの交流絶縁特性」,平成12年電気関係学会九州支部連合大会,No.752,福岡(2000)
(7)
高村正樹、大塚信也、趙孟佑、橋本洋助、中村道昭、匹田政幸:「SF6/N2/CO2混合ガスの絶縁破壊に至るまでの部分放電特性に関する検討」放電・誘電・絶縁材料・高電圧合同研究会、2001/1/25、pp.97-102 (2001)
(8)
大塚信也、趙孟佑、匹田政幸、橋本洋助、中村道昭:「環境低負荷型新絶縁媒体ガスの絶縁特性」第1回九州・電力技術研究会、pp.19-24 (2001)
(9)
江口和寿、高村正樹、大塚信也、湯浅禎之、岡部成光、匹田政幸:「交流正サイクルにおけるN2/C3F8混合ガスの部分放電特性」平成13年電気学会全国大会、p.2627 (2001)
(10)
高村正樹、大塚信也、椎木元晴、鈴木克巳、匹田政幸:「高気圧準平等電界下におけるSF6/N2/CO2混合ガスの絶縁特性」平成13年電気学会全国大会、p.2638 (2001)
(11)
江口和寿,高村正樹,大塚信也,趙 孟佑,湯浅禎之,岡部成光,匹田政幸:「交流正サイクルにおけるN2/C3F8とCO2/C3F8混合ガスの部分放電特性」平成13年電気学会電力・エネルギー部門大会,pp.338-339, 2001 (宮城)
(12)
高村正樹,江口和寿,大塚信也,趙孟佑,橋本洋助,中村道昭,匹田政幸:「SF6/N2/CO2混合ガスにおける交流正サイクル部分放電の時系列特性」2001年電気学会基礎・材料・共通部門大会,p.55,2001.9.21-22 (愛媛)
(13)
高村正樹,小川裕司,江口和寿,大塚信也,橋本洋助,中村道昭,匹田政幸:「直流電圧印加時におけるSF6/N2/CO2混合ガスの部分放電時系列特性」平成13年電気関係学会九州支部連合会大会,p.248,2001.10.5-6 (佐賀)
(14)
江口和寿,小川裕司,高村正樹,大塚信也,趙 孟佑,湯浅禎之,岡部成光,匹田政幸:「遺伝的アルゴリズムから決定した最適絶縁性能をもつ混合ガスの絶縁破壊特性」電気関係学会九州支部第54回連合大会,p.249,2001(佐賀)
(15)
高村正樹,江口和寿,大塚信也,趙孟佑,中村道昭,匹田政幸:「環境低負荷型絶縁媒体ガスの絶縁特性に関する研究」,平成13年放電学会若手セミナー,Vol.45 (別冊),pp.78-79,2001.11.8-9 (福岡)
(16)
江口和寿,高村正樹,大塚信也,趙 孟佑,湯浅禎之,岡部成光,匹田政幸:「環境調和型ガス絶縁機器の新絶縁媒体の探索と絶縁基礎特性に関する研究」平成13年放電学会若手セミナー,2001 (福岡)
(17)
江口和寿,木下和也,小川裕司,高村正樹,大塚信也,趙 孟佑,湯浅禎之,岡部成光,匹田政幸:「遺伝的アルゴリズムにより決定したPFC混合ガスの絶縁特性調査による絶縁性能最適化への検討」放電 / 誘電・絶縁材料 / 高電圧合同研究会,E D-02-04,DEI-02-12,H V-02-04 2002 (長崎)
(18)
趙 孟佑,木下和也,大塚信也,湯浅禎之,岡部成光,匹田政幸:「遺伝的アルゴリズムによる最適混合ガス探索のためのC3F8混合ガスの絶縁破壊特性」平成14年電気学会全国大会,p.,2002 (東京)
(19)
高村正樹,江口和寿,大塚信也,趙孟佑,中村道昭,匹田政幸:「SF6/N2/CO2混合ガスにおけるインパルス絶縁破壊時の部分放電発光特性」,平成14年電気学会全国大会,Vol.6-133,2002.3.26-29 (東京)
(20)
江口和寿,高村正樹,大塚信也,趙 孟佑,湯浅禎之,岡部成光,匹田政幸:「遺伝的アルゴリズムによる最適混合ガス探索のためのC3F8混合ガスの絶縁破壊特性」,平成14年電気学会全国大会,p.,2002.3.26-29 (東京)



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